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東京で驚いた

著者 井上 理津子
ジャンル 書籍  > 単行本(文芸)
出版年月日 2026/05/30
紙版
書店発売日
2026/05/27
ISBN
9784334109851
判型・ページ数
四六・256ページ
定価
1,980円(税込)
電子書籍
配信日
2026/05/27
価格は各配信サービスにてご確認ください
内容紹介
著者紹介
関西出身で、『さいごの色街 飛田』など大阪の表裏を書いてきた筆者が、十数年前に移住した東京での生活の中で出会った違和感や驚きを起点に、都市の中に息づく文化や歴史を東西を比較しながら掘り下げていくルポエッセイ。
日常の中でふと目にしたものを「なんだこれは」と立ち止まって見つめ、その背景を調べ、人に話を聞き、体験しながら理解を深めていき、東京と大阪という歴史と文化をもつ巨大都市のそれぞれの多層性を浮かび上がらせる。
冒頭の章「富士塚と富士講」では、東京都内各地に点在する「富士塚」と、それを支えてきた「富士講」を取材。筆者は羽田神社で初めて富士塚に出会い、その奇妙さと同時に参拝者の多さに驚く。やがてそれが、江戸時代に富士山信仰を背景に築かれた人工の山であり、実際に登拝できない人々が富士登山と同じご利益を得るための装置であったことを知る。さらに調査を進める中で、富士講という信仰集団が江戸庶民の間に広まり、共同体として機能していた歴史や、現在も続く活動の実態に触れていく。そこには、宗教と娯楽、地域の結束が混ざり合った独特の文化があり、都市生活の中で見えにくくなった信仰の形が残されている。
筆者の関心は信仰だけにとどまらない。例えば「東京の水道水」をめぐる章では、昆布茶の味の違いという些細な体験から、水の硬度の差という科学的事実に行き着く。大阪の軟水と東京のやや硬い水は、料理や飲み物の味に微妙な違いを生み、それが地域の食文化に影響していることを明らかにしていく。こうした身近な体験から社会や歴史の構造へと視野を広げていく展開は、本書の大きな特徴である。
全体を通して浮かび上がるのは、東京という都市が単なる現代的な大都会ではなく、江戸以来の信仰や生活文化が折り重なった場所であるという姿である。同時に、大阪出身者としての視点が、東京を相対化し、大阪との違いを鮮やかに際立たせている。
日常の違和感を起点に、歴史・民俗・都市文化へと掘り下げていく本書は、東京を「知っているつもり」の読者にこそ、新たな発見をもたらす一冊である。
井上理津子 奈良市生まれ。大阪のタウン紙「女性とくらし」編集を経てフリー。産婆さん、旅、味、酒、人権、遊郭、葬送、本屋、個人商店など、「戦後の庶民史」をテーマにしてきた。長い大阪暮らしを経て、2010年から東京在住。著書に『さいごの色街 飛田』(筑摩書房/新潮文庫)、『葬送の仕事師たち』(新潮文庫)、『絶滅危惧個人商店』(ちくま文庫)など多数。

井上 理津子

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